NIHON KOGEIKAI
NAZO-NAZO



NAZO-NAZO

テーマ:美しい彫金(ちょうきん)の作品

金工の作品がいくつか現れてきました。
とても、かわいらしいですね。

花や果実、昆虫などがデザインされた小金具です。

いずれも、
重要無形文化財保持者(人間国宝)の
桂 盛仁(かつら もりひと)さんの作品です。


PHOTO: YASUDA TADASHI (2009/01/07)

桂 盛仁さんは、2008年(平成20年)に、
「彫金」のわざで、重要無形文化財保持者に認定されました。

桂 盛仁さんは、写真のような「帯留」やブローチ、
そして「打出し」のわざでつくった「香炉」など
精密な金工作品をつくっておられます。

金工の仕事は、おおきく
以下の3つの分野に分かれます。

 
金工の仕事

(写真は、作品例)


齋藤 明


ちゅうきん
「鋳金」

鋳型に融けた金属を
流しこみ器をつくる

田口壽恒


たんきん
「鍛金」

金属の板を叩いて絞り
器を成形する

増田三男


ちょうきん
「彫金」

金属の表面に文様を
彫るなどして加飾する

*「日本刀」、「刀剣研磨」の仕事を除きます。

今回は、そのうちの「彫金」の仕事の特徴や、
歴史について少し調べてみましょう。

そして、彫金のわざでつくられた、
美しい作品をたっぷりと鑑賞していただきましょう。


ちょうきんのきそちしき  
彫金の基礎知識(1)


鏨(たがね)をつかう金工の加飾技術
彫金のわざとは?


「彫金」とは,「鏨」(たがね)などを用いて,
金工品の素地表面を彫ったり打ち出したりして装飾する技法をいいます。

主な技法は,以下のとおりです。

ほり
「彫り」

「鏨」(たがね)で文様を彫る技法


毛彫(けぼり)      
片切彫(かたきりぼり)  
透彫(すかしぼり)    
蹴彫(けりぼり)     
肉合彫(ししあいぼり)  


写真:透彫の作品部分

ぞうがん
「象嵌」

地の金属に他の金属を嵌めて文様とする技法


平象嵌(ひらぞうがん)   
重ね象嵌(かさねぞうがん) 
高肉象嵌(たかにくぞうがん)
線象嵌(せんぞうがん)   
布目象嵌(ぬのめぞうがん) 
金銷象嵌(きんけしぞうがん)


写真:布目象嵌の作品部分

「その他」

金属の裏側から打ってレリーフ状にする「打出し技法」ほか


打出し(うちだし)     
魚々子打(ななこうち)   
高肉(たかにく)レリーフ  
薄肉(うすにく)レリーフ  


写真:打出しの作品部分

*主なものだけ列挙しました。

このように、彫金は、
長い歴史のなかで、いろいろと複雑な技法を開発し、
それらを駆使できるように発展してきました。

桂 盛仁さんの道具類
PHOTO: YASUDA TADASHI (2009/01/05)

「鏨」(たがね)
PHOTO: YASUDA TADASHI (2009/01/05)

金工作家のみなさんは、
とてもたくさんの「鏨」(たがね)をもっています。

金属の種類や、技法の違いなどによって
それらは使い分けられます。

「鏨」(たがね)の先端の形状や大きさも、さまざまです。

また、金属を彫るには、硬さが求められるので、
使用する前には、必ず「焼き」が入れられます。

「焼き」を入れるとは、刀の刃や鏨などを焼いたあと、水で急冷して硬く鍛えること。
PHOTO: YASUDA TADASHI

ここで、クエスチョン!

Q - 1


ご覧の鏨(たがね)は、凸型ではなく、
先端部分が凹(へこ)んでいます。

どのような文様を彫るものでしょうか?

「鏨」(たがね)の一部
PHOTO: YASUDA TADASHI (2009/01/07)

正解は、下をクリックするとご覧になれます!

古く「正倉院文書」に、「魚々子打工」の名称があり、
奈良時代には、すでに専門の工人がいたようです。


ちょうきんのきそちしき  
彫金の基礎知識(2)


室町時代から江戸時代
彫金の歴史は?

日本の彫金技法は,
弥生期に大陸から伝播して発達したといわれています。

古く、正倉院の宝物でも、
「八角鏡」(はっかくきょう)や「薫爐」(くんろ)などに、
透彫(すかしぼり)、毛彫(けぼり)などの
彫金技法による文様表現を見ることができます。

ところで、日本の彫金技法の歴史を考えるうえで
忘れてはならないのが「刀装金具」(とうそうかなぐ)です。

日本では、鎌倉時代になって、武士が台頭し、
彼らは、刀剣を「佩用」(はいよう)するようになりました。

武士が刀剣を携帯する(腰にさげる)ときの
装置一般のことを「刀装」(とうそう)といいます。

「柄」(つか)とか、「鞘」(さや)とか呼ばれる部分です。

室町時代以降は、
この刀装を加飾する技術が隆盛しました。

つまり、刀剣の「鐔」(つば)や「目貫」(めぬき)などに、
彫金技法をつかって、美しく精緻な細工が施されました。

ところで「刀剣」の各部分を何と呼ぶか、ご存知ですか?
下の図の(A)〜(H)をクリックすると、名称があらわれます。

いくつ答えられるでしょうか?

江戸時代になると、
このような「刀装金具」(とうそうかなぐ)をつくる工人たちは、
幕府や藩によって保護されました。

そして、工人たちは多彩な技法を駆使して
さらに繊細で優れた作品を数多く生み出しました。

なお、これらの仕事をしていた工人たちのうち、
室町時代から続く後藤家は「家彫り」と呼ばれ、
在野の流派は「町彫り」と呼ばれました。

彫金技術の進歩は、「刀装金具」以外の分野でもみられました。
たとえば、神社仏閣などの建築物の装飾です。

ここで、再び、クエスチョン!

Q - 2


神社仏閣などでつかわれた金具を
「錺金具」と呼びます。

「錺」という漢字は「国字」のひとつです。
何と読むでしょうか?

「国字」とは、日本でできた和製漢字のことです。

ヒント:金でつくられた製品で、上品で魅力的なものとは?

正解は、下をクリックするとご覧になれます!

平安時代に建てられた
「平等院鳳凰堂」や「中尊寺金色堂」などの阿弥陀堂建築には、
「透彫錺金具」(すかしぼりかざりかなぐ)が多く用いられました。


平等院鳳凰堂
PHOTO: YASUDA TADASHI (2005/03/30)

また、桃山時代になると「錺金具」も大きく豪華になり、
細かい動植物などの文様も施されるようになりました。

おもなものとしては、菊・梅・柏・牡丹などの植物や、
鶴・亀・龍・虎・鷲・鷹・鳳凰などの動物がモチーフとなりました。

かざりかなぐのおもなもよう
「錺金具」のおもな文様


 菊(きく)        
 梅(うめ)        
 柏(かしわ)       
 牡丹(ぼたん)      

 鶴(つる)          亀(かめ)          龍(りゅう)         虎(とら)          鷲(わし)          鷹(たか)          鳳凰(ほうおう)     

このように、彫金の技術は、
刀装金具(とうそうかなぐ)や、
錺金具(かざりかなぐ)を制作しながら進歩してきました。

そして、江戸時代の中期、
元禄年間(1688〜1703)になると、
彫金の技術もピークを迎えたといわれています。

元禄年間に、
武士たちはステータスシンボルとして、
自分の好みを施した「印籠」(いんろう)や、
「煙管」(きせる)を注文したりしました。

また商人の場合は、大店の番頭や主人たちが
いろんな小物で身を飾ることを楽しみました。

幕府は「奢侈禁止令」を出して贅沢を禁止しましたが
しかし、武士や商人たちは、
小さな「装身金具」の美にこだわり続けました。

そこで、彫金家たちは、
これらの「装身金具」の分野でも腕を競い合ったのです。

中央が「横谷宗ミン」(町彫りの祖)
(資料提供:桂 盛仁氏)


ちょうきんのきそちしき  
彫金の基礎知識(3)


明治時代から現代
彫金の作品

明治になると、世の中は一変しました。

明治9年に、廃刀令が出されました。

彫金家たちは、「刀装金具」の仕事を失い、
「装身金具」によって活路を開くことになりました。

明治初期、新しい表現を開拓した彫金家に、
加納夏雄(かのうなつお)がいます。

彼は当代随一の名工といわれ、片切彫の技法を得意としました。

花瓶(かびん)や額(がく)などの大作から、
「帯留」(おびどめ)などを制作しました。

彼は、東京美術学校(現・東京芸術大学)の教授となり、
1890年(明治23)には、初の帝室技芸員となりました。

弟子に、海野勝ミン(うんのしょうみん)がいます。

明治19年出版 高名金工彫美術表
(資料提供:桂 盛仁氏)

東京美術学校の流れのほかに
町彫りの系譜に、豊川光長があらわれました。

豊川光長は、とくに商家の旦那衆に人気があり、
キセルや煙草入れ、そして根付けなどに彫金を施す
粋で洒脱な作風が一世を風靡しました。

大正から昭和にかけて活躍した彫金家に、
豊川光長の一番弟子、桂 光春がいます。

桂 光春は、帯留などの小金具などをよくしました。

そして、桂 光春を伯父にもち、
戦後、活躍した彫金家に、
桂 盛行(かつらもりゆき)がいます。

ここでクエスチョン!

写真は、桂 盛行氏の作品です。
いずれも「帯留金具」です。

 
作品名に、「烏瓜」(からすうり)、
「雉鳩」(きじばと)、「柿」(かき)とありますが、
最後の「香魚」とは、どんな魚でしょうか?

写真:「彫金 桂盛行展」より


下の、A、B、Cのなかから、正しいものをえらんでください。

正解をえらぶと、つぎのページにすすめます。

あまご

いわな

あゆ


製作著作
社団法人日本工芸会
2009